「既製杭のケーシング工事って何をするの?」
「ケーシングは何のために使うの?」
「施工管理ではどこを確認すればいい?」
杭工事に携わる施工管理者の中には、このような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
既製杭の施工では、地盤条件や採用する工法によってケーシングを使用する場合があります。
この記事では、既製杭のケーシング工事について、施工手順から品質管理・写真管理・安全管理まで、施工管理者の目線で解説します。
この記事で分かること
- 既製杭とは何か
- ケーシングとは何か
- ケーシングを使用する目的
- 既製杭ケーシング工事の施工手順
- 杭工事で確認する品質管理項目
- 写真管理のポイント
- 安全管理で注意するポイント
- 施工管理者が現場で確認したい項目
1.既製杭とは?
既製杭とは、工場などであらかじめ製作された杭を現場へ搬入し、地盤中に施工する杭のことです。
代表的な既製杭には、
- PHC杭
- SC杭
- 鋼管杭
などがあります。
場所打ち杭のように現場で杭体を造成するのではなく、完成した杭を現場で施工することが大きな特徴です。
そのため、杭そのものの品質を工場で管理しやすいというメリットがあります。
一方で、現場では杭を設計位置・設計深度まで正確に施工するための管理が重要になります。
2.ケーシングとは?
ケーシングとは、杭施工時などに使用する鋼製の筒状部材です。
地盤の崩壊や土砂の流入などを防ぎ、施工箇所を安定させる目的で使用されます。
特に、
- 軟弱地盤
- 砂質地盤
- 地下水位が高い地盤
- 崩れやすい地盤
- 埋戻し地盤
などでは、地盤条件を確認したうえで適切な施工方法を選択する必要があります。
3.既製杭の施工でケーシングを使用する目的
ケーシングを使用する主な目的は3つあります。
3-1.孔壁の崩壊を防止する
掘削した部分の地盤が崩れると、施工精度に影響するだけでなく、作業員や重機の安全にも関わります。
ケーシングによって施工箇所を保護し、地盤の崩壊を防ぎます。
3-2.土砂の流入を防ぐ
地下水を含む砂質地盤などでは、掘削部分に土砂が流入する可能性があります。
ケーシングを使用することで、施工箇所を保護します。
3-3.周辺地盤への影響を抑える
掘削によって周辺地盤が変状すると、近接する構造物や埋設物などへ影響を及ぼす可能性があります。
そのため、施工前に周辺状況を確認することが重要です。
4.既製杭ケーシング工事の施工手順
ここからは、基本的な施工の流れを紹介します。
※実際の施工方法は、採用する工法、杭種、地盤条件、設計図書などによって異なります。
STEP1.杭芯の確認
まず、杭を施工する位置を確認します。
施工前には、
- 杭芯
- 杭径
- 杭長
- 杭本数
- 杭天端高さ
- 支持層
- 周辺構造物
- 埋設物
などを確認します。
杭芯の位置確認は、杭工事の基本です。
施工開始前に測量を行い、設計図書との照合を行います。
STEP2.施工機械の据付け
杭打機やケーシング施工機などを所定の位置に据え付けます。
ここで重要なのが、
「施工機械が安定しているか」
という点です。
地盤が軟弱な場合には、施工機械の荷重によって沈下や傾きが発生する可能性があります。
必要に応じて敷鉄板などを使用し、施工機械を安定させます。
STEP3.ケーシングの建込み
杭芯に合わせてケーシングを建て込みます。
このとき、
「杭芯とケーシングの位置が合っているか」
「ケーシングが傾いていないか」
を確認します。
ケーシングが傾いた状態で施工すると、その後の杭施工にも影響するため注意が必要です。
STEP4.ケーシングの圧入・掘削
地盤条件や採用工法に応じて、ケーシングを圧入・回転などさせながら施工します。
施工中は、
- ケーシング深度
- 掘削深さ
- 鉛直性
- 排土状況
- 地盤状況
- 地下水の状況
などを確認します。
設計時の想定地盤と実際の地盤が異なる場合は、施工を継続する前に関係者と協議することが重要です。
5.既製杭の建込み
ケーシング施工後、既製杭を建て込みます。
杭を吊り込む際には、杭本体を損傷させないよう注意します。
特に長尺杭の場合は、吊り込み時のたわみや接触による損傷などに注意が必要です。
杭を建て込んだ後は、
- 杭芯
- 鉛直性
- 杭長
- 杭番号
などを確認します。
6.杭の接合作業
杭長が1本では足りない場合は、複数の杭を接合して施工します。
例えば、
下杭 → 接合 → 上杭
という順番で杭を継ぎ足していきます。
接合作業では、
- 接合部の状態
- 杭の芯ずれ
- 接合方法
- 溶接部などの品質
- 接合後の鉛直性
などを確認します。
杭の接合部は施工後に地中へ隠れるため、施工中の写真撮影と記録が重要です。
7.支持層の確認
杭工事で重要なのが、杭先端が設計上必要な支持層に到達しているかという確認です。
設計図書や施工計画書などに定められた管理基準に基づき、
- 施工深度
- 支持層の確認
- 貫入状況
- 施工抵抗
- 掘削土の状態
などを確認します。
想定していた支持層と実際の地盤が異なる場合には、現場判断だけで施工を進めず、設計者・監理者などと協議することが重要です。
8.既製杭工事の品質管理
施工管理者が特に確認したい品質管理項目を紹介します。
杭芯の位置
設計上の杭芯からずれていないか確認します。
杭芯のずれは、基礎や柱の位置などにも影響する可能性があります。
杭の鉛直性
杭が大きく傾いていないか確認します。
ケーシングの鉛直性も合わせて確認することが重要です。
杭長
設計上必要な杭長が確保されているか確認します。
杭を接合して施工する場合は、使用した杭の種類・長さ・接合位置などを記録します。
支持層
設計上必要な支持層まで施工できているか確認します。
地盤条件に変化があった場合は、特に注意が必要です。
9.杭工事の写真管理
既製杭工事では、施工後に地中へ隠れてしまう部分が多いため、写真管理が非常に重要です。
例えば、
- 杭芯確認
- ケーシング建込み
- ケーシング施工状況
- 杭搬入
- 杭番号
- 杭建込み
- 杭接合部
- 杭長確認
- 支持層確認
- 施工完了
などを記録します。
写真を撮影するときは、
「何を確認するための写真なのか」
を意識しましょう。
単純に施工状況を撮影するだけではなく、後から見た人が内容を判断できる写真にすることが重要です。
10.杭工事の安全管理
杭工事では大型重機や重量物を使用するため、安全管理も重要です。
特に注意したいのが杭の吊り込み作業です。
主な確認事項は、
- 重機の転倒防止
- 作業半径内への立入禁止
- 玉掛け作業
- 合図者の明確化
- 吊り荷の下への立入禁止
- 杭の転倒防止
- 墜落防止
- 周辺構造物との離隔
などです。
「いつもやっている作業だから大丈夫」と考えず、毎日の作業前に危険ポイントを確認することが大切です。
11.施工管理者が覚えておきたい5つのポイント
既製杭のケーシング工事では、まず次の5項目を押さえておきましょう。
① 杭芯
杭の位置は設計どおりか?
② 鉛直性
ケーシング・杭が傾いていないか?
③ 杭長
必要な杭長が確保されているか?
④ 支持層
設計上必要な地盤まで到達しているか?
⑤ 記録
施工したことを写真・測定記録などで証明できるか?
この5つを意識するだけでも、杭工事の施工管理がかなり整理しやすくなります。
12.施工管理技士の試験対策としても覚えておきたい
杭工事は、施工管理技士の試験でも重要な分野です。
特に、
「なぜその施工方法を採用するのか」
を理解しておくことが大切です。
単純に用語を暗記するのではなく、
地盤条件 → 工法選定 → 施工 → 品質管理 → 安全管理
という流れで理解すると、実務にも資格試験にも役立ちます。
13.まとめ
既製杭のケーシング工事では、地盤条件に応じてケーシングを使用し、地盤の崩壊や土砂の流入などを防ぎながら杭施工を行います。
施工管理では、
「杭芯・鉛直・杭長・支持層・記録」
の5項目を重点的に確認することが重要です。
また、杭工事は施工後に地中へ隠れてしまう部分が多いため、施工中の写真や測定記録を適切に残しておく必要があります。
施工管理者として大切なのは、
「施工した」だけではなく、「設計どおり施工したことを記録で証明できる」状態にすることです。
杭工事は、工法や地盤条件によって施工方法が異なります。
実際の現場では、必ず設計図書・特記仕様書・施工計画書・施工要領書などを確認し、現場条件に適した施工・管理を行いましょう。
関連記事
施工管理の仕事をしている方は、以下の記事もおすすめです。
- 【工程管理】施工管理で工程表を作成するときのポイント
- 【品質管理】コンクリートのジャンカを防ぐ施工管理
- 【品質管理】コールドジョイントの原因と防止方法
- 【施工管理】アンカーボルトの施工管理ポイント
- 【資格勉強】1級建築施工管理技士の勉強方法
- 【現場管理】工事写真で失敗しないためのポイント
「現場で実際にどう管理するのか」を意識して、施工管理に役立つ情報を発信していきます。
